白山周辺(岐阜) 天狗山(1660m)、大日ヶ岳(1709.0m)、鎌ヶ峰(1666m)、水後山(1558.6m)、蝉ヶ岳(1200m) 2022年3月12日  カウント:画像読み出し不能

所要時間 6:16 駐車箇所−−6:23 朝日添川−−8:09 1286.9m三角点峰−−9:09 1596m峰−−9:37 天狗山(1660m峰)−−9:43 1658.5m三角点峰(休憩) 10:16−−10:46 大日ヶ岳−−11:21 鎌ヶ峰−−11:24 1160m峰(立ち話) 11:32−−11:56 水後山−−12:46 蝉ヶ岳(休憩) 13:01−−13:09 廃林道−−13:50 朝日添川−−14:11 駐車箇所

場所岐阜県郡上市/高山市
年月日2022年3月12日 日帰り
天候
山行種類残雪期の藪山/一般登山
交通手段マイカー
駐車場林道の途中に駐車余地あり
登山道の有無大日ヶ岳〜鎌ヶ峰〜水後山間は夏道があるが他は無し
籔の有無積雪で藪は皆無
危険個所の有無無し
冬装備スノーシュー
山頂の展望天狗山:大展望
大日ヶ岳:大展望
鎌ヶ峰:大展望
水後山:北西〜北以外は大展望
蝉ヶ岳:展望皆無
GPSトラックログ
(GPX形式)
ここをクリックしてダウンロード
コメント鎌ヶ峰(1666m峰)のみ日本山名事典の山。大日ヶ岳周辺の山を朝日添川源流域の尾根で一気に周回。まだ残雪期としては早い時期でスノーシューが活躍したが、天狗岳〜大日ヶ岳間は濃いトレースでツボ足でも沈まないほどだった。芦倉山方面からの足跡は1人か2人の古いものあり。大日岳から水後山方面は2つ目の1650m峰まではスキーと1人のスノーシュートレースがあったがその先は鎌ヶ峰までトレース無し。鎌ヶ峰より先はウィングヒルズ白鳥リゾートから登ってきた老夫婦のトレースあり。蝉ヶ岳の尾根から朝日添川左岸尾根に乗り移るトラバースは予想外の急斜面と柔雪で難儀。おまけにルートミスで枝尾根に入ってしまい朝日添川まで下って対岸へ渡る羽目に。老朽化したスノーシューは左足側のリベットの一つが飛んでしまい下りで苦労した


水後山から見た天狗山と大日ヶ岳南西の1660m峰
地図クリックで等倍表示


昨年も利用した駐車箇所 車道両側は雪の壁
除雪終点に先客の車あり 朝日添川右岸の林道をちょっとだけ進む
林道を離れて植林の斜面へ 標高840m付近。植林幼木が広がる
標高980mで尾根に乗る カモシカの足跡。どこにでもあるほど多く見られた
標高1040m付近 ヤドリギの実
本当に粘るのか試したら粘っていた 1110m鞍部で二重山稜っぽくなる
標高1220m付近。積雪は1mも無い 標高1270m付近の熊棚
1286.9m三角点真上のはず 1つ目の1430m峰から見た1596m峰
2つ目の1430m峰から見た芦倉山 ラッセルは足首程度
1596m峰向けて広い尾根を登る 標高1580m付近から立木がほとんどなくなる
1596m峰付近から見た白山方面
1596m峰付近から見た大日ヶ岳と水後山
古いスノーシュートレース登場。ラッセルから解放された 途中でもう一人のトレースが合流
左の尖ったピークが天狗山1660m峰(山頂) トレースが新雪に覆われている場所も
天狗山手前で白山方面を振り返る
天狗山(1660m峰)への登り。とtレースが格段に濃くなる 天狗山(1660m峰)山頂。巨大雪庇の上
天狗山(1660m峰)から見た360度パノラマ展望(クリックで拡大)
1660m峰と1658.5m三角点峰鞍部の休憩跡 天狗山1658.5m三角点峰てっぺん
1658.5m三角点峰から見た天狗山(1660m峰) 天狗山より先は往来する人の姿が多い
中央が大日岳。山頂に立っている人が肉眼でも確認できた
朝日添川を挟む尾根。今回はここを周遊
大日岳直下の登り。トレースだらけ 広く平坦な大日岳山頂。30年ぶりだが前回の記憶なし
大日岳から見た360度パノラマ展望(クリックで拡大)
大日岳から見た白山、天狗山 大日岳から見た鎌ヶ峰。これからあそこへ向かう
これまでと一変して尾根にはクラックあり 2つ目の1650m峰から見た大日岳。トレースはここまで
2つ目の1650m峰から見た鎌ヶ峰と1660峰 1650m峰からの下りは結構急だがスノーシューのままでOkだった
せり出した巨大雪庇 鎌ヶ峰への登り返し。動物の足跡しかない
標高1620m付近。結構な傾斜 1660m肩直下。最も傾斜がきつい場所
1660m肩で新しい足跡登場。ここで引き返したようだ 1660m肩から見た大日ヶ岳
1660m肩から見た鎌ヶ峰、1660m峰 1660m峰では足跡の主2人が休憩中だった
1660m峰から見た360度パノラマ展望(クリックで拡大)
標高1590m付近。小ピークあり 標高1590m付近から見た1660m峰
標高1590m付近から見た朝日添川左岸尾根
標高1530m付近の岩 標高1520m鞍部付近
水後山山頂
水後山から見た北東〜南〜西の展望(クリックで拡大)
水後山から見た1540m峰 1540m峰直下は雪庇
1540m峰から見た天狗山〜大日ヶ岳〜水後山
1540m峰から見た1501m肩にかけての尾根 1501m肩から見た蝉ヶ岳へ繋がる尾根
標高1440m付近から見た蝉ヶ岳に続く尾根 標高1340m付近から見た1501m肩
標高1280m付近 蝉ヶ岳手前の岩
この先約80mが地形図の蝉ヶ岳山頂だがピークは無い 1194.6m三角点で西からスキー跡登場
1194.6m三角点(雪の下)で休憩 1194.6m三角点から東を見ている
帰りは三角点から北へ下った 標高1100m付近。雪が緩んでラッセルが深い
標高1060m付近で林道(おそらく廃林道)に合流 標高970mの林道分岐で林道を離れて斜面トラバース
最初は傾斜は緩い 地形図で読めないが傾斜が急な場所あり
奥の高まりが目的の尾根 尾根に乗ったら獣の足跡登場。最初は人間のかと思った
蝉ヶ岳を振り返る 標高990m肩。ここで北西の枝尾根に引き込まれてしまった
標高960m付近。ルートミスに気付いたがそのまま下った 標高930m付近から朝日添川を見下ろす
標高860m付近 カモシカの足跡で朝日添川を渡った
対岸の林道に乗った 除雪終点。朝あった車は無くなっていた
積雪で何の案内標識なのか不明 駐車箇所到着。先客はまだ戻っていなかった
上在所集落の駐車場。間違いなく野伏ヶ岳登山者のもの 路側駐車も多かった
鳥居前の広い除雪地も駐車場と化していた
県道にも駐車するほど今日は賑わったようだ
スノーシュー破損個所。ナット止めに変更 緩み止めナット。かなり固く固定される
ジュラルミン製フレームの穴が摩耗してこの状態 ステンレス金具の根元に針金を巻いて簡易的な対策としている


・白山南部の別山からさらに南に延びる稜線上の山は一昨年、昨年に結構登り、残りの主要な山は大日ヶ岳周辺のみとなった。実は大日ヶ岳は30年くらい前の秋に登っており、未踏は天狗山、鎌ヶ峰(日本山名事典に記載。大日ヶ岳南西の1666m峰)、水後山、蝉ヶ岳である。なお、30年前の記憶はほとんど残っておらず、残っているのは営業前のリフト小屋内部で夕飯にサンマを焼いたことくらいである(笑)

・未踏の山の配置を考えれば朝日添川源流部両岸の尾根を周回するのが最も効率がいい。これだと起点が石徹白の上在所集落となるのでアプローチもいい。駐車箇所としては集落内ではなく朝日添川に延びる林道の途中に除雪された駐車スペースがあるのは昨年の経験で分かっているので、夜中に到着しても他の車の出入りで安眠を妨害される心配もない。

・3週連続で高鷲方面へ向かう。今週末は気温が高く路面凍結の恐れが無いと安心していたが、確かに安房トンネル付近でも全く問題なかったが、桧峠を越えて石徹白へと下っていると昼間に雪解けした水が路面に流れた箇所が凍結していた。気温は+2℃だったのでまさか凍っているとは思っておらず、カーブで横滑りした時にはかなり焦ったが、道幅が十分広かったので事故には至らなかった。これより後は黒く濡れたように見える路面の通過には十分注意した。

・昨年に石徹白に入ったのは今回より1ヵ月くらい後だったことと、今年は積雪量が多いこともあって石徹白は昨年の光景とは大違いで道の両側は雪壁状態だった。これだと朝日添川に延びる林道が除雪されているか心配になったが、上在所集落の県道終点から先に除雪が延びていてラッキーだった。昨年使った駐車スペースもしっかりと除雪され数台駐車が可能な状態だった。ここには建物があるわけでもなく何の目的で駐車スペースを除雪しているのか不明だが、芦倉山に登る際には重宝する存在だ。夜中に到着したが満天の星空で明日も好天が期待できる。酒を飲んで爆睡した。

・あまりの爆睡だったようで目覚まし時計のアラームに全く気付かず、予定より1時間遅れで起床。急いで朝飯の支度をしていると1台の車が林道の奥へと消えていった。私と同じく登山が目的か、それとも渓流釣りだろうか。朝飯を食っていると1台の車が隣に駐車して薄明るくなってから4人組が出発していった。ザックにはワカンが括り付けられていたので山が目的だろうが行先はどこだろうか。野伏ヶ岳ではないことだけは確で、私と同じく天狗山でなければ芦倉山が妥当な予想だろう。

・急いで飯を作ったため煮込みが浅くキャベツの芯が生煮えの野菜スープをかきこんで、一部の食材は時間短縮のため下山後に食うことにして、起床から1時間で出発とまともな朝飯を食った条件では記録的な早さだった。これでも計画より30分以上の遅れで、気温が上昇して雪が緩む前に前にできるだけ距離を稼ぐ計画が狂ってしまい、この遅れがどれほどの影響を与えるのかは分からない。ただし、本日のルートなら暗くなる前に問題なく戻って来られるだろう。

・本日の装備はスノーシューの他に念のために軽ピッケルと10本爪アイゼンを持つことにした。時期的に考えてアイゼンは不要の可能性が高いが、尾根が痩せていそうな場所や傾斜が急な場所もあるためだ。結果的には軽ピッケル、アイゼンとも出番は無くスノーシューだけが大活躍した。やはりまだ残雪期としては早く雪の締まりがイマイチだった。

・最初はスノーシューを背負って舗装道路歩き。少し雪が残った場所はツルツルに凍結していてそろりそろりと注意深く通過。朝日添川を渡る橋の僅か先まで除雪されており、林道を奥まで入っていった車が駐車してあった。ここは1台しか駐車するスペースは無い。ここから朝日添川上流に向かう林道へと右折するが、さすがにこちらは除雪されていないのでスノーシューを装着。林道入口の雪面は足跡が多数あったが人間のものではなく動物のものらしく、林道に上がると古い足跡が1人分あるだけだった。隣に駐車した4人組はどうやら保川方面に延びる林道に進んだようだ。

・林道はUターンするようにジグザグるが雪に埋もれているので林道は無視して斜面を登って林道の続きへとショートカットし、斜面の傾斜が緩んだ場所で林道を離れて植林された斜面を登ることにした。このまま林道を進んで適当に天狗山の稜線に突き上げることも可能だが、雪がある時期なら尾根歩きの方が展望が楽しめる。雪質はまだ締まり切っていないので足の甲くらいは沈むが、先月の大高山のように常時脛まで沈むような激ラッセルはもう無いのでずいぶん楽なシーズンになってきた。もっと時期が進めば全く沈まなくなるだろう。

・傾斜が緩むと広範囲で伐採され、まだ植林された木が背が低い幼木の斜面が広がっていた。日当たりがいい南斜面なので雪質に期待できるが、まだ体重を完全に支えられるほどクラストしておらず大半の場所では足の甲ほどの深さで踏み抜きがあった。日当たりの悪い植林帯の中ではクラストしておらず雪は柔らかいままで足の甲程度の沈み込みがあったが、踏み抜きと違って同じ深さでも疲労度はずっと軽い。不連続に沈む半端な雪質は新雪よりも厄介であった。この時期は日当たりが悪くまだ雪が締まっていない植生の方が歩きやすい。

・標高980mで尾根に乗る。今回使った朝日添川右岸尾根には目印は皆無で、利用者はほとんどいないようだった。もちろん先行者の足跡もスキー跡も無かったが、小動物やカモシカの足跡は多数あった。また、この地域ではヤドリギが目立ち、低い位置にくっついていたヤドリギに半透明な実が成っていたのでもぎ取って中身を確認。ヤドリギは鳥が実を食べて糞の中に混じった種が木にへばりついて生息範囲を広げるため、実には粘着性があるはずと思っていたが実際にその通りで、ゼリーのように弾力性のある透明な果実表面には強い粘り気があって指に張り付いて逆さにしても落ちなかった。

・1110m鞍部付近は左側の谷が浅く二重山稜のようになっているが実際は異なり、これまで登ってきた右側の尾根を登り続ける。標高1220m付近で木の根元で地面が見えているものがあったが、どうも積雪量は思ったより少なくて1mも無いようだ。標高1270m付近では熊棚登場。そういえばこの天候ではそろそろ熊も冬眠から目覚めるかも。そろそろ熊避けの鈴の出番かも。

・傾斜が緩んで肩に到着すると1286.9m三角点があるはずだが積雪で見ることはできない。ここから北側には谷を挟んで目の前に頭が平らな顕著なピークが見えており、地形図を広げて現在位置が1286.9m三角点付近だと判明。登りは細かなルートを気にせずとも山頂に立てるので読図は大雑把で構わない。標高1350m付近では本日初めて雪庇が登場。ただし長続きしない。

・1430m峰で北西からの顕著な尾根に合流すると尾根北側は杉の植林に変わり、1596m峰付近まで続いた。1430m峰からは1596m峰へと登る広い斜面が見えていた。一部植林の隙間が空いて北の展望が開けた場所では昨年登った芦倉山が真っ白な姿を見せていた。あそこを歩いた時にはガスに覆われて先が見えず、下りで正確に尾根をトレースするのに苦労させられたなぁ。

・高度が上がって1596m峰が近付くと立木が徐々に減ってきてスキー向きの大雪原が広がるようになる。今日は好天で周囲が見渡せるからいいが、ガスった日にこんな場所は苦労するだろう。1596m峰で芦倉山に続く主稜線に乗るが予想に反してトレースは無し。今週は好天続きで平日でも縦走者がいると思ったのだが。ラッセルから解放されると期待していたのに残念・・・と思っていたが、ピークを過ぎてから数日前のものと思われるスノーシューのトレースが左から合流。どうやらこのトレースの主は1596m峰を僅かながら巻いたようだ。ここまで一人ラッセルだったが、この先はラッセルから解放されて大助かりだった。

・天狗山までは同じような高さのなだらかなピークを越えていく。地形図では1658.5m三角点峰を山頂としているように見えるが、日本山名事典ではそのすぐ西側の1660m峰を天狗山山頂としているのでそれに従う。先人のトレースは1660m峰北側を巻いておりそのまま巻いてしまったが、巻き終わってからここが山頂では?と気付いて東側から山頂へ向かった。トレースがあったが雪庇の張り出しに警戒してから正確な山頂よりずいぶん北側の低い位置までしか達していなかったので最後は多少のラッセルで正確な天狗山山頂に立つ。立木皆無の360度の大展望が広がり、やや霞んでしまっているが白山も見えていた。ほとんど同じ高さのはずだがここから見ると東隣りの三角点峰が低く見えた。

・ここは北寄りの風を避ける場所が無いので休憩は傾斜が緩い三角点峰で取ることにしてさらに進む。1640m鞍部付近は広範囲で足跡が広がっていかにも団体様が休憩したような形跡だった。おそらく風を避けられる場所だったのだろう。そこから緩やかに登ると三角点峰のてっぺんに到着。こちらも背の高い立木は皆無で大展望が楽しめる。雪面から顔を出したダケカンバに小さな山頂標識が付いていた。

・冷たい北寄りの風を避けるために南斜面で休憩。今日は好天予報で日焼け止めと暑さ対策で今シーズン初めて麦わら帽子を持ってきて正解。ただし、帽子で日差しを遮っても雪面の反射で日焼けしてしまうので日焼け止めは必須。既に日が高くなる前に顔に日焼け止めは塗ってあるので問題なし。ここからは大日ヶ岳山頂が見えるが立木皆無なので数人の姿が見えていた。また、稜線をこちらに向かってくる登山者の姿も。最初にやってきた名古屋の若者とはしばし立ち話。大日ヶ岳から鎌ヶ峰方面へ向かったとのことだがクラックが酷くてヤバそうだったので途中で引き返したとのこと。私はその稜線を下る計画だが、はたして危険度はどれほどだろうか。まあ、こういう時に備えてのアイゼン、ピッケルなので大丈夫だろう。どうしても通過不可能なら朝日添川に下ってしまう手もある。

・だいぶ長話してしまい相手に時間を取らせてしまったのはちょっと申し訳なかったが、今シーズンの雪山で初めて会った相手だったのでちょっと嬉しかった。やはりここは残雪期のメジャールートだけはある。

・天狗山から大日岳まではあまりにトレースがしっかりしているのでスノーシューを脱いでツボ足で歩いてみたが、日が高い時刻にも関わらずほとんど踏み抜きは無く快適に歩けるほどしっかりと踏み固められていた。ということはスキーヤーよりも歩きの人が多いということだろう。確かにすれ違った人の大半は歩きでスキーヤーは数人だけだった。

・なだらかな稜線を進み続け、最後も緩やかに登ってだだっ広く矮小な立木さえ皆無の大平原が広がる大日ヶ岳山頂に到着。あまりに広くてどこが山頂なのか分からないくらいで、おそらく無雪期にはあるはずの山頂標識の欠片も無かった。山頂一帯は無数のスキー跡とスノーシューの跡であふれかえっていたが、そのほとんどが高鷲スノーパークのリフト山頂駅からのものであろう。私のようにわざわざ石徹白から登る人は皆無に近いに違いない。あまりに山頂が広いので人数は多くてもみんなバラけて休んでいて密な人の塊は無かった。

・私は天狗山で休憩したばかりなので大日ヶ岳では休憩はせず写真撮影だけして朝日添川左岸尾根に向かった。天狗山で長話した男性の話通りに一人分のスノーシューの跡があり、スキー跡はもっとたくさんあったが、これまでのようなとんでもなく濃いトレースではないのでツボ足では潜り方が激しくなったのでスノーシュー装着。スノーシュー跡もスキー跡も2つ目の1650m峰まで続いていたが、そこから1590m鞍部へと下る急斜面の入口で全て消えていた。全員がここで引き返したということだ。ここから見下ろす稜線は南側に雪庇が大きく張り出してクラックも多く見られるが、大きな危険個所は無いようだ。まだ残雪期には早い季節なので積雪量は多く、雪庇の先端やクラックを避けても藪に突っ込むことはないので大型連休頃に比較すれば歩きやすいと言えよう。ただし雪の締まりがイマイチだが。

・急な下りでスノーシューのままで行けるかちょっと心配だったがそのまま問題なく下れた。しかし下りでは左足のスノーシューに違和感が。まるで地面がグニャグニャして横滑りするような奇妙な感覚だった。以前にも同じような経験があり、その時はスノーシューのビンディングとフレームを接続するステンレス製金具が破断していた。今回もどこか不具合が発生したに違いないが、とりあえず傾斜が緩いところまで進んで確認した結果、前回破断したステンレス製の金具とフレーム本体を接続するジュラルミン製の小さな部品をフレームに固定している3か所のリベットのうち内側のリベットが飛んで無くなっていた。登りの場合はこの金具が本体に押し付けられる方向だが、下りでは本体から引きはがされる方向でグラグラするのであった。このまま歩き対づけると金属疲労で金具が破断するのは確実で、これ以降はできるだけ金具に負荷がかからないような歩き方に切り替えた。この故障が発生したこともあって翌日の登山は断念して日曜日早朝に帰宅することにした。

・急な下りが終わると稜線の左側(南側)は地形図の表記から読み取れないが切れ落ちて雪庇が大きく張り出して根本にはクラックが多く走り。稜線直上を歩くのは危険な状態で大きく右寄り(北寄り)を進んでいく。動物の足跡も同様だ。クラックはちょうど尾根直上付近が多く夏道が判別できるかもと思ったが、この時期はまだクラックの幅は狭く本当に夏道があるのかは分からなかった。

・鎌ヶ峰(1666m峰)への登り返しもクラックを避けて右側を迂回。結構な傾斜であるが雪が柔らかいので滑落の危険性は無く安心してスノーシューのままピッケル無しで登ることができた。雪面から笹が顔を出していたので早い時期に藪が出てしまう場所らしい。鎌ヶ峰山頂の一角である1650m肩直下は雪庇になりかけていて半分雪壁状態で、カモシカが下った時に落としたと思われる雪の塊が落ちている箇所の少し左側を登って雪庇上に出ると真新しい人間の足跡が出現。雪を落としたのはカモシカではなく人間だったのだ。この急な下りを見て先に進むのを諦めたらしい。先ほど通過した1650m峰の急な下りでもトレースが消えていたが、積雪期はこの2箇所が鬼門らしい。ただし、私の経験からすれば傾斜は急ではあるが危険を感じるほどではなく、現にスノーシューのままでピッケルの出番も無く通過できたのだから。

・鎌ヶ峰の山頂一帯も立木は皆無で巨大雪庇に覆われていて360度の大展望。北斜面側にブナが生えているが今は雪庇のおかげでそれより高い位置にいる。お隣の1660m峰には休憩中の人の姿が見えており、足跡の主と思われる。私が追い付くことができるかな?

・1660m峰にかけての稜線も南側が切れ落ちて雪庇端付近は危険なので先人のトレースに倣って右寄りを登っていく。そういえばこのトレースの主はワカンやスノーシューではなくツボ足であるが、まさか登山口からずっとこのまま歩いたのだろうか? だとしたらラッセルに相当苦労しただろう。

・1660m峰の北の肩で老夫婦と思われる男女がささやかな雪洞を掘って風を避けながら優雅に休憩中だった。どこから登ってきたのか聞いてみたら南側のウィングヒルズ白鳥リゾートからとのことであった。これより先でもこの2人以外のトレースは無く、積雪期にこちらから登る人はほとんどいないようだ。大日ヶ岳に登るなら東側の高鷲スノーパークの方が距離は短いしリフト終点の標高は高いし余計なピークは無いので、他のルートから登る人が少ないのは当然だが。1660m峰も鎌ヶ峰と同様で尾根は巨大雪庇に覆われて立木は無く大展望だった。この2人にこの尾根には夏道があるのか聞いてみたらあるとのこと。夏道があるのだった物好き以外はらわざわざ雪がある時期に来ることもないか。

・1660m峰から水後山への下りもやや急であったがスノーシューのまま普通に前を向いて下ることができる程度の傾斜であった。この尾根も左側(東側)が切れ落ちて雪庇がせり出してクラックが入っているので尾根直上より右側のブナ樹林帯を下っていく。クラックが見られなくなると足跡はツボ足からスノーシューに変わっていて、どうやら危険地帯と判断してスノーシューを脱いだようだった。

・水後山へは穏やかな尾根を緩やかに登り返して山頂に到着。これまでの尾根と同様に尾根の北側にブナが立ち並ぶが、雪庇状の雪の高まりのおかげでその他の方向はブナより高い位置まで目線が上がっているので展望はいい。夏道があるのだから山頂標識もあるのだろうが、雪に埋もれて人工物は皆無だった。老夫婦の足跡は確かにここから南に下っており、私はここでトレースと分かれて西に下る。

・水後山付近以降は尾根上にクラックは無く普通に尾根上を歩けるようになったので楽になった。左足の破損したスノーシューでは斜めになった場所を歩くと破損個所の隣のリベットに応力が集中して破損が進む可能性があったので、左右に傾きが無い尾根上を歩けるのは非常にありがたい。

・水後山の西隣の1540m峰は直下だけ急で小さな雪庇を乗り越えると、雪庇に覆われたなだらかな尾根を西へと下っていき、1501m肩で西へと直進する尾根と分かれて蝉ヶ岳に続く南西へ。ここは先の尾根の様子を見通せるため地形図を見る必要はなかった。分かれた直進方向の尾根は蝉ヶ岳に立ち寄った後に再び登って末端付近まで下る予定である。

・1501m肩から先の尾根は幅が広く傾斜が緩んで快適だ。対岸の1596m峰付近からここまでずっとブナを中心とする落葉樹委の自然林が続いていたが、先に見えている蝉ヶ岳付近は尾根南側が植林になっている。高度が落ちるので植林があって当然だが、既に杉花粉のシーズンに入っているのでイヤな存在だ。まあ、この近辺ならまだ飛び始めくらいでピークには達していないだろうが。

・尾根南側に杉植林帯が登場したのは1286m標高点付近からで、蝉ヶ岳までずっと南側が植林、北側が自然林の植生だった。1190m鞍部付近で雪の上に顔を出した岩が登場し、この先は明瞭な高まりはなくごく僅かに登っているように感じる程度。体感的に最高地点と思われる場所に到着すると西側からスキー跡が登場。この主はここ(蝉ヶ岳)が目的地だったようでここで引き返していた。

・体感的に蝉ヶ岳山頂と思われた場所も南側が植林、北側が自然林でどちらも背が高い木なので展望は皆無だった。山頂標識も皆無で目印も無し。天狗山から休憩無しで歩いてきたので日当たりがいい場所で休憩。展望が無いのはイマイチだが冷たい北寄りの風が避けられるので休憩にはいい場所だった。ちなみに帰宅後にGPSの軌跡を確認したところ、休憩した場所は1194.6m三角点肩で真の蝉ヶ岳山頂はここより東へ100mほどの地点であった。真の山頂は通過しているが体感的には三角点より高かったようには思えなかった。それだけ山頂一帯は平坦であり、この一帯を山頂と言うことでいいだろう。
・最後の休憩を終えて出発。駐車場所に戻るには今いる尾根を下ったのではダメで、そのまま進むとかなり標高が下がった場所に下されてしまう。戻るためには一本北側の尾根に乗り換える必要があるため、蝉ヶ岳から北に向かって下ることにした。こちらは最初は自然林だが標高1100m付近で植林帯に変わり、標高1060m付近で地形図に出ている林道に乗った。林道は雪に埋もれているので路面状況は分からないが、道の真ん中に木が生えていたりしたので廃林道化しているのだろう。

・そのまま標高970m付近まで下るとこれまた地形図通りに林道の分岐が登場。ここで谷に沿って下っていく林道から離れて斜面をトラバースして尾根を目指す。この付近は南斜面で日当たりがいい影響か、まだ背の低い杉には花芽がたくさん付いている。目の痒みは無いので本格的な花粉飛散は始まっていないようだが、枝葉に触らないよう注意して進んでいく。地形図ではなだらかな斜面のはずなのに傾斜がきつかったり、谷があって横断したり、雪が緩んでしかも水を大量に含んだ重い雪でラッセルが大変で、予想外に苦戦して息が上がる。これならトラバースではなく上を目指して登って尾根に乗った方が速くて楽だったかもしれない。

・枝尾根を2つ越えてやっと主尾根に出ることができた。尾根上には明瞭な足跡があり人間のものかと思ったら動物の足跡。まるで人間が隊列を組んで先頭だけがラッセルしたようにトレースは狭くて広がっていない。動物もラッセルはイヤなのかも?

・この明瞭な獣の足跡に引きずられて990m肩から北西へ延びる枝尾根に吸い込まれてしまった。ここで地形図を読めば北西に引き込まれやすい地形であることが分かったはずだが、もう駐車箇所まで近いこともあって油断してしまった。ルートミスに気付いた時にはかなり下ってしまい、登り返すよりもこのまま下って朝日添川沿いの林道を下った方がいいとの判断で、そのまま下り続けた。目的の尾根の北斜面は自然林であったが、標高950m付近からまだ背が低い杉の幼木帯を下り、平坦な朝日添川左岸に出た。

・このまま左岸沿いを下ろうかとも思ったが、途中で岸が切り立って進めない可能性もあるので、朝日添川を渡って右岸側にある林道に乗ることにした。問題は渡れるような水量の少なさであるか、スノーブリッジがあるかどうか。幸いにして川に向かうカモシカの新しい足跡を発見し、それに従ったら足跡はスノーブリッジで対岸へ渡っており、簡単に対岸に出ることができた。

・林道に上がると古い足跡が1人分だけ。そう言えばこの林道の起点付近は往路で通ったが、確かに1人の足跡があったなぁ。林道を下ると往路の自分のスノーシューの跡に合流。朝はまだ雪が締まっていたのでほとんど私の足跡は残っていなかったので、帰りは往路とは微妙に異なるルートで除雪終点に出た。除雪終点にあった車は既になくなっていて先に下山して帰ったようだ。この主はどこを登ったのだろうか?

・スノーシューをザックに括り付けて駐車場所まで舗装道路歩き。除雪された林道は雪の上より格段に楽に歩ける。おまけに朝は凍ってツルツルだった箇所も雪が緩んで安全に歩けるようになっていた。駐車場に到着するとお隣の車はまだあり、私より30分くらい早く出発したがまだ戻っていていなかった。今日の私の行程で所要時間は8時間ほどかかっているが、それよりも時間がかかるのだから芦倉山より先へ進んだのだろうか。

・着替えを済ませて上在所集落に戻り、野伏ヶ岳方面がどうなっているか確認してみることにした。石徹白川にかかる橋に下ると道は除雪されていたが駐車場は未除雪だった。どうりで上在所集落内の路側にまでたくさんの車が駐車していたわけだ。当然ながらこれらの車の大半は野伏ヶ岳を目指す人たちのはずで、本日の大日ヶ岳登頂人数と大差ないほどの賑わいだっただろう。午後3時近くでもこれだけ車があるのだから朝はもっと数が多かったに違いない。ちなみに橋を渡ってから左右に車道が分かれるが、どちらも除雪されていた。特に北上する林道が不完全ながら除雪されていたのには驚いた。

・本来ならば明日もどこか登る予定だったが、破損したスノーシューをこのまま使うともっと深刻な破損につながる可能性が高く、今週はこれで打ち切りとして帰途に就いた。


・帰宅後にスノーシューの修理を実施。リベット止めを行うのは不可能なのでねじ止めに変更。ただしここは常に地面(雪面)に接して体重がモロにかかって大きな負荷がかかり続けるため、普通のネジでは緩むのは確実。そこでナットは緩みにくい特殊なものに。アイゼンの固定ナットでも使われていたネジの上部が樹脂で滑り止めされたもの。実際に締めてみたら相当固く、これならネジロック(緩み止めの接着剤)よりも効果は高そうだ。ネジはステンレス製にしたので錆びることも無いだろう。もし緩んでもまだネジもナットも数個あるので交換は可能。

・この他にもジュラルミン製フレームの穴が摩耗してキャンバス製のデッキが脱落する故障が2年くらい前から発生している。昨年からはデッキを固定するステンレス金具の根元に針金を巻いて、摩耗して拡大した穴を通らないような簡易的な処置で対応している。このスノーシューは2008年に購入したもので、もう14年も使い続けているので十分に元は取れたと思うが、もう修理不能という状況になるまでは使い続けるだろう。フレームが破断するとか大きく変形するとかしない限りは大丈夫かな? ちなみにビンディングが付いているアイゼン部分のステンレス板の破断は過去に2回発生して交換したが、その金額で新品が買えたなぁ(笑)

 

都道府県別2000m未満山行記録リスト

 

日付順2000m未満山行記録リスト

 

ホームページトップ